ミュラー筋は「まぶた」の裏にあり、弱まると眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)の原因となります。ミュラー筋の損傷は「まぶた」のたるみや眼瞼下垂症につながるだけではありません。ミュラー筋はからだ全体につながる筋肉なので肩こり、腰痛などの原因ともなります。予防法としてはリンパマッサージなどが有効です。
ミュラー筋という筋肉が「まぶた」の裏側にあります。眼瞼下垂症とも深いかかわりがあります。
ミュラー筋は、まぶたを開閉するために収縮する働きをしていますが、損傷を受けたり伸びきった状態になると、まぶたを引き上げる力が弱まります。重い場合には治療が必要な眼瞼下垂症と診断されることがあるほどで、顔のしわたるみは年齢的なものだけでなく「まぶた」のたるみが顔全体のたるみ、むくみという印象をつくり出している場合があるのです。
ミュラー筋は「まぶた」の裏にありますが、この筋肉はからだ全体の筋肉に連動しているので、ミュラー筋に緊張が起こると連動した先の筋肉のさまざまな部位に緊張を起こすことになります。また、ミュラー筋の収縮は自律神経とも連動しているため、ミュラー筋の緊張は自律神経にかかわる症状の原因にもなります。
瞼がたるむと、無理をして瞼を開けようとするので、このときミュラー筋に力が入ります。ミュラー筋の緊張は、額の筋肉から頭の筋肉を緊張させ、頭の筋肉は首から肩に掛けての筋肉を緊張させます。このようにして肩から背中へ、そして腰までも連動してゆきます。緊張が続く部位では症状を起こすことも出てきます。たとえば目の近くでは、目の奥の痛み、歯の上の方に感じる痛み、めまい、頭痛、不眠などの症状に関係し、ミュラー筋と連動した頭部の筋肉のさらに先では首筋のこり、肩こり、さらには背中のこり・痛み、腰痛まで引き起こす原因となっていることが最近の形成外科の研究から解明されてきました。
ミュラー筋と自律神経とのつながりに関しては、まぶたのたるみを無理して引き上げようとすることで、自律神経も緊張状態を招くことがわかっています。自律神経の緊張が続くと、不眠、不安、疲労などにつながるというわけです。ミュラー筋の緊張に連動した自律神経の緊張は、便秘、眼精疲労、倦怠感、慢性疲労、冷え性、不安、うつなどの症状にも関係しています。
まぶたのたるみは、顔のしわたるみといった美容上の問題から日常生活で不便を感じるようになると、眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)という病気と診断され、治療を要することになります。
まぶたのたるみを起こすミュラー筋の伸びの原因を突き止め、眼瞼下垂症の治療や予防法を勉強しておきましょう。リンパマッサージが予防法として役にたちますので、リンパについても説明します。
ミュラー筋がまぶたの裏側でその開閉に深く関わっているのですが、まぶたの腫れを超えると眼瞼下垂症と診断される病気があります。眼瞼下垂症とは、ミュラー筋の損傷によりまぶたが開きにくくなる疾患で、先天的な原因による場合と後天的な原因による場合があります。眼瞼下垂症と診断されるのは、顔を正面に向けて「瞼」が中央の黒眼(瞳孔)の上まで上がらない状態の場合です。日常生活では本人は無意識のうちに黒眼を出す行為をしているので気がつかないまま放置されていることもあります。眉毛や顎を上げたり、顔全体を回したりして視野を確保しようとしている場合が多いので、注意が必要です。
眼瞼下垂症の後天的な原因は、老化のほかには、目をこするといった「まぶた」やミュラー筋への刺激が主なものです。目をこすることは無意識にしていることが多いので、一度朝から夜までの自分の動作を振り返ってみるのも良いでしょう。洗顔、顔拭き、化粧、花粉症、涙もろい、夜更かしをする、コンピューターやテレビの見すぎで目をこするなどです。このような行為でまぶたへの刺激が続いたり強かったりすると、、まぶたの開閉にかかわるミュラー筋がゆるんだり、はずれたりすることになります。目をこすることが多い人は、年齢に関係なくミュラー筋を痛めたり、眼瞼下垂症を引き起こす可能性があります。まぶたをこすることによって誰でも眼瞼下垂症になる可能性があるのですが、このほか、アトピー性皮膚炎、逆さまつげの人やコンタクトレンズを長期間装用している人、白内障の手術を受けた人は眼瞼下垂になりやすい傾向があるといわれます。
眼瞼下垂症の予防法は、原因となる行為をしないことから始めます。ミュラー筋に刺激を与えないよう、目をこすらないこととまぶたに無用の力を加えないことが大切です。また、ミュラー筋を緊張させないように、まぶたへの負担が大きくなるような視角を取らない工夫をします。たとえば読書や編み物、また料理でも、目線を下げるような姿勢を取ったり、パソコン画面も斜め下に見るような工夫をしてみましょう。ミュラー筋はまぶたを上げるときに緊張しますから、日常生活のさまざまな場面でまぶたを下げる姿勢をとる工夫を心がけることが大切です。ミュラー筋の緊張がやわらぐことになります。
眼瞼下垂症による不眠がある場合には、就寝時の布団の中で目線を下げることを意識します。目を閉じたときアゴを引き、目線が下斜め45度になるようにしみてください。睡眠時のミュラー筋の緊張が自律神経を緊張させている場合があります。
まぶたのたるみが原因となっている肩こりなどは、まぶたの手術で治ることになります。不自然な姿勢や運動不足、ストレスなどが原因とされてきた肩こりではなく、ミュラー筋の支障に由来する肩こりには眼瞼下垂症の手術が効果があるということです。
眼瞼下垂症の治療は手術によって回復しますが、予防法の一つとして手軽にできるリンパの流れを助け、老廃物の排せつを促す健康法をご紹介します。
ミュラー筋によって開閉するまぶたは、顔のしわたるみに大きな影響を与える大切なポイントに位置しています。まぶたの腫れやむくみの原因にリンパ液の流れが滞ってゐる場合があります。眼瞼下垂症にも関係するミュラー筋を傷つけず、リンパの流れを助ける手軽なリンパマッサージの方法を見てみましょう。
リンパマッサージはサイモスセラピー、リンパ排泄健康法などとも呼ばれ、リンパの働きを維持あるいは利用する予防医学的な考え方に基づきます。予防医学とは、狭い意味では病気を未然に防ぎ健康を維持することを目的とする医学ですが、広義には重症化の防止、疾病の再発防止、リハビリテーションなども含まれ、保健学、栄養学、看護学、教育学さらには心理学等の医学以外の分野との連携も必要とされています。予防医学には、人間ドックや健康診断も予防医学に含まれますが、治療医学と違って保険が適用されないため、普及していないのが実情です。
予防医学としてのリンパセラピーを見てみます。
リンパのはたらきには、排泄機能と免疫機能があります。リンパの働き、特に排泄機能が弱まると体調の変化を引き起こします。顔のしわ、たるみは加齢によるもののほかに、リンパの働きが障害となっている徴候の場合もあり、その場合は全身の健康に対する危険サインが出ているともいえるもので、不眠、肩こり、腰痛などに共通に関連していることがあります。これらの症状を起こさないために、またこれらの症状を改善するために行われるリンパマッサージが、サイモスセラピーと呼ばれるリンパ排泄健康法です。リンパマッサージは、リンパのはたらきのうち特に排泄機能を回復させ、血行を良くすると共に免疫力の増加から自然治癒力を取り戻し、結果として健康の維持、回復につながることを目的としています。
リンパの流れが滞って起こるむくみ、たるみにはこのリンパマッサージが有効です。たとえば、二の腕のたるみ、バストライン、脇の下のたるみなどには上半身のリンパへ、バストアップ目的に絞るならならバストラインのリンパへ、身体の整体や、ヒップアップ、足のむくみ、太ももの前、後面、ウエストのくびれなどを目的とするなら下半身のリンパへ、それぞれマッサージすることになります。
リンパの循環を促すリンパマッサージの方法は、リンパの流れを助ける程度ですから力はいりません。手のひらや指を該当部位へ当て軽くさする程度です。マッサージの方向はリンパ液の流れる方向で、最終的には鎖骨へ向かいます。各部位では最も近い位置にあるリンパ節へ向けてマッサージします。
まぶたのたるみや、顔のしわたるみもリンパの流れを促進させることで、たるみ予防や改善に効果があります。顔のマッサージを例にします。顔のしわ、たるみは顔の筋肉の緊張も原因ひとつですから、マッサージによる筋肉のリラックス効果も期待できます。リンパマッサージは力を入れないので、まぶたをさする時もミュラー筋に不要な刺激を与えることはありません。
上まぶたと眼の下はともに、目頭から目元に向かって流します。目もとで合流したら、頬骨にそって耳の前でとめます。耳たぶへ向かって流し、あごのラインに沿って下へ流します。目頭から鼻に沿って下におりる流れもあるので、こちらも口元から顎へ向かって流してあげます。額は眉間からまっすぐ上に持ち上げ、髪の生え際からこめかみまでマッサージします。
首は下へおろし、鎖骨は体の中心から肩へ向けてリンパを流します。 あごのラインを引き締めるには、頬からあごへおろし、あごの骨に沿って耳の後ろへ。耳の後ろから首を通って鎖骨へ向かってマッサージすることになります。。
リンパ節のうち、マッサージでポイントとなるのは次のような部位です。 耳下腺リンパ節(耳の後ろにある少しふくらんでいる部分)、頸部リンパ節(あごのエラ付近の部分)、鎖骨リンパ節(左鎖骨の体の中心付近にあるでっぱりから指3本分肩側にずらした部分)、腋窩リンパ節(わきの下の部分)、腹部リンパ節(へそを中心に半径10センチ付近)、鼠径リンパ節(両足の付け根部分)、膝窩リンパ節(ひざの裏)などです。 ゆったりした気持ちで呼吸に合わせて行いましょう。
マッサージの方向はリンパ液の流れる方向を知ることが大切です。最終的には鎖骨です。各部位では最も近い位置にあるリンパ節へ向けてマッサージしますので、自分の必要とする部位のリンパ節の位置、リンパ管の位置、リンパの流れの方向を理解すれば、しわ、たるみ、むくみの予防に役立てることができます。